100g未満FPVドローンの製作 – 最終回(飛行時間の検証)
前回まで100g未満FPVドローンの機体製作、ファームウェアのカスタム化およびインストール、パラメータ設定とチューニングを行い、ドローンが安定に飛行できるようになりました。今回は100g未満FPVドローンの製作目標であった飛行時間5分以上について実際に飛行させて検証し、さらなる飛行時間の長時間化の可能性について検討します。
飛行時間の検証
以下の条件で飛行時間を確認したところ飛行時間は平均して約6分となりました。目標とした5分以上の飛行を達成することができました。少しリスクを冒してBATT_LOW_VOLT=7.0V、ロイターモードでフリー飛行させたところ飛行時間は最長7分40秒となりました。
| 条件項目 | 条件 |
|---|---|
| バッテリー | 2セル550mA,100C フル充電(端子電圧8.4V) |
| フェールセーフ 「電池低下電圧」 BATT_LOW_VOLT | 7.1V |
| 飛行モード | ロイターモード、ホバリング |
| 飛行開始 | GPSのロックおよびアーミング後に機体を上昇 |
単に目標達成で終わりではつまらないので、バッテリ選定時に単純に推定した時間6.6分より短い要因について検討してみます。 飛行中に消費される電流容量Ahw(mAh)は以下の式で表されます。
Ahw = Afc ー Abf ー Ares (Afc:フル充電時の容量、Abf:飛行前(GPSロック前)に消費される電流容量、Ares:飛行後(着陸後)の電流容量残)
Ahw = Af × Tf (Af:飛行時の電流値、Tf:飛行時間)
Abf = Agps × Tgps (Agps:GPSがロック待ち時の電流値、Tgps:バッテリーを装着してGPSがロックするまでの時間)
今回、ホバリング時の電流値Afは平均で約4.2A、飛行時間Tfは上記に示した6分でした。また、Agpsは1.18A、Tgpsは約1分30秒でした。飛行中の電源電流はバッテリー選定時に想定した5Aよりも1A弱少なくなってとなっていますが、飛行時間は短くなっています。 これは、AbfおよびAresによりバッテリー容量Ahwの100%を飛行に使用することはできないためです。尚、トランジスタ技術2022年4月号の電流値と比較すると約1A増です。この原因としては、比較的電流が大きいフライトコントローラ、FPVカメラ、VTX、OpticalFlowを搭載しているためと推測されます。
飛行中に消費した電流容量Ahwは、4.2×6.0/60=0.42 Ah=420 mAhとなり、消費電力量は、飛行開始時の電圧8.0V、着陸時の電圧7.3Vとすると420×(8.0+7.3)/2=3213 mWh(3.2Wh)と推定されます。また、GPSロックに要した電流容量Avfは、1.18×1.5/60=0.03Ah (30mAh)となります。AhwとAvfより、着陸後の電流容量残Aresは約100mAhと推定されます。バッテリー定格電流容量の約82%程度がGPSロックおよび飛行に使用されたことになります。このように実際の飛行ではバッテリーの定格容量を100%使い切ることはできません。
尚、本ドローンにおけるバッテリーの電流値ですが、どうもArdupilotのVer4.6.2では電流電圧換算パラメータ「BATT_AMP_PERVLT」のデフォルト値がGOKU GNF405S AIO 40A用に設定されてようで、本ドローンで使用しているGOKU GNF405S AIO 20Aの値の1/2になっていました。上記の電流値はフライトコントローラでの測定値を2倍した値です。
飛行時間の長時間化
以上のように飛行時間は飛行時に消費される電流容量と飛行時に流れる電源電流により決まります。従って、飛行時間を長くするには、バッテリー容量増以外に、
- 比較的少ない電流で飛行に必要なトルクを生み出すモータを使用する(Afの低減)
- 消費電流の少ないフライトコントローラやセンサーを使用する。(Agpsの低減、Afの低減)
- ロック時間の短いGPSを使用する。(Agpsの低減)
- 内部抵抗の小さいバッテリーを使用する。(BATT_LOW_VOLTを低く設定できるバッテリーを使用する。)(Aresの低減)
などが考えられます。本100g未満FPVドローンとしては、上記の2,3の項目でさらに飛行時間の長時間化が図れると思います。特に、フライトコントローラに使用されているSTM32F405は販売開始が20年以上前のMPUであり、Ardupilotが搭載できる他のMPUと比べると電源電流が大きめになっています。また、VTX、FPVカメラ、オプティカルフロー、GPSも結構電流が流れます。これらの部品を電流の少ない新しいものに変えればさらに飛行時間は延びるものと思います。
以上で100g未満FPVドローンの作製記は終わります。Ardupilotには色々な飛行モードがあります。オプティカルフローのキャリブレーションに使用したスイッチB(Channel7)はもう使用しないのでこのスイッチを使って、市販のドローンにも搭載されているモードの「Flip」や「Throw」に設定して飛行させることができます。また、スイッチCでAutoモードに切り替え、Mission Plannerであらかじめ設定したwaypointに沿って自動飛行させることもできます。もちろんFPVドローンですので、ゴーグル受信機を用い「Acro」モードに設定してダイナミックな飛行もできます。いろいろ楽しんでください。




