100g未満FPVドローン製作 – パラメータ設定(チューニング(1))
前回までに100g未満ドローンについて機体の初期設定を行い、一通り飛行が可能な状態まで設定が完了しました。今回からは、安定な飛行ができるように飛行に関するパラメータの調整を行っていきます。チューニングについては比較的容易に行える範囲で説明します。
- 初回フライト(振動の抑制)
- ピッチとロールの手動チューニング
- フェールセーフ電圧値の最適化
- オプティカルフローのチューニング
より詳細なチューニングについてはAdupilotの「Tuning Process Instructions」を参照してください。「AUTOTUNE」や「Quick Tune」などの自動チューニングの方法が記載されています。しかし「AUTOTUNE」では、100g未満ドローンが軽いので全くの無風状態でないと機体が流されてチューニングを完了することができません。また、ドローンの飛行可能時間が短いため3軸(pitch、roll、Yaw)を一回では完了せず3回に分けて行う必要があるなど結構手間がかかります。また、「Quick Tune」は風の影響を軽減でき手軽にチューニングを行えますが、フライトコントローラがSDカードを搭載していることが必須です。残念ながら今回の100g未満ドローンのフライトコントローラではSDカードを搭載していないので「Quick Tune」を実施することはできません。
初回フライト(振動の抑制)
初回フライトでは、ドローンが飛び上がることができるのか、振動が発生していないのかを確認します。そのためにフライト開始前に姿勢制御パラメータを安全サイドに設定し直します。パラメータの変更は以下の通りです。
- Ardupilotのドキュメントに従い、フライトモード1を「LAND」から「STABILIZE」に変更する。
- Ardupilotのドキュメントでは「「ATC_THR_MIX_MAN」=1、「MOT_THST_HOVER」=0.25以下に設定する」となっている。初期設定によりそれぞれ1、0.2に設定されているのでそのままにする。
- 姿勢制御のパラメータをそれぞれ初期値の50%にする。
- ピッチ関連:「ATC_RAT_PIT_P」、「ATC_RAT_PIT_I」、「ATC_RAT_PIT_D」
- ロール関連:「ATC_RAT_RLL_P」、「ATC_RAT_RLL_I」、「ATC_RAT_RLL_D」
姿勢制御パラメータの設定は次のように行います。Mission Plannerの「設定/調整」画面を開き、画面右の「拡張チューニング」タブ①をクリックします。ドローンのロール軸、ピッチ軸、ヨー軸についてPID各パラメター値②が表示されます。「ロールレート」、「ピッチレート」の「P」「I」「D」欄が上記の各「***_P」「***_I」「***_D」パラメータに該当しますので、表示されている値の50%に再設定して「パラメータ書込」ボタン③をクリックしてフライトコントローラに書き込みます。

以上のパラメータを設定した後、いよいよ初回フライトを行います。手順は以下の通りです。
- プロペラをドローンに装着する。
- ドローンの異常フライトに備え、5m程度の長さの細い紐かワイヤーの一端をドローンのバッテリーケースの下部に結びつけ、片方を地面に固定した棒等に括りつける。
- ドローンを飛行開始場所に移動させる。
- バッテリーを装着し、フライトコントローラが正常に起動(青色LEDが点滅、2度のビープ音、プロペラは静止)することを確認し、地面に置く。
- 安全のためドローンから5m以上に離れてRC送信機を操作する。
- RC送信機でスイッチCを上側、スイッチDを上側にしてフライトモードを「STABILIZE」にし、左スティック(スロットル、ヨースティック)を「右下」に5秒以上固定して、アーミング(モータ起動)を行う。モータが回転し始めたら右スティックを中央下に戻す。
- スロットルをゆっくり上げる。
- ドローンが急に飛び上がったり、裏返しになった場合には左スティックを「左下」に数秒間固定(ディスアーム)してモータを止める。その後、必ずプロペラを外して、パラメータの初期設定が間違っていないか、モータの位置、回転方向が間違っていないかを確認する。
- ドローンが離陸できたら、1m程度上昇させ、振動していないか、異常音はしないかを確認する。
- 振動や異常音がある場合には、ドローンをゆっくり着陸させてモータを止め、バッテリーを外す。Mission Plannerと接続し、上記の姿勢制御パラメータを現状値の50%に設定し直し、振動や異常音が無くなるまで3.~10.を繰り返す。
- 振動や異常音が無ければ、RC送信機の右スロットルでピッチとロールをわずかに操作し、操作方向にドローンが追従することを確認する。ピッチの追従方向が逆の場合はRC送信機のピッチ設定が「INVERSE:逆方向」に設定されていない可能性がある。
- ドローンを着陸させ、初回フライトを完了させる。
ピッチとロールの手動チューニング
上記の初回フライトで、振動が無くなれば手動チューニングでロールとピッチの姿勢制御パラメータを最適化します。最適化の基本は、ドローンが振動しない状態を保ちながら姿勢制御パラメータを増加させ、振動発生の直前の値に固定させることです。ロールとピッチについてどちらかを固定して片方単独でチューニングする方法もありますが、今回は両方のパラメータを同時に変更してチューニングを行います。以下にチューニングの手順を示します。
- MissionPlannerとドローンを接続し、上記の姿勢制御パラメータの設定方法によりロールとピッチのD項のパラメータを50%増加させる。設定後ドローンとMission Plannerの接続を解除する。
- 上記2~5の安全操作を行う。
- RC送信機のスイッチCを上、スイッチDを下にして、フライトモードを「ALTHOLD」モードにする。
- アーミング後、スロットルをゆっくり上げ、3m程度でホバリングさせ振動が無いか確認した後、着陸させる。
- 振動が無ければ、振動が発生するまで1~4を繰り返す。
- 振動が発生したならば、ロールとピッチのD項のパラメータを10%減少させ、振動が無くなるまで2~4を繰りかえす。
- 振動が無くなったならば、ロールとピッチのD項のパラメータをさらに25%減少させる。
- 次にロールとピッチのP項のパラメータを50%増加させるさせ、振動が発生するまで2~4を繰り返す。
- 振動が発生したならば、ロールとピッチのP項のパラメータを10%減少させ、振動が無くなるまで2~4を繰りかえす。
- 振動が無くなったならば、ロールとピッチのP項のパラメータを2さらに5%減少させる。
以上のマニュアルチューニングにより100g未満ドローンを安全に飛行させることができます。
次回はフェールセーフの電圧値の最適化とオプティカルフローのチューニングについて述べます。




