100g未満FPVドローンの設計 – 3Dプリントパーツの設計・作製

2025年10月5日

 前回までは、フレームおよび電子パーツの選定を行ってきました。今回は3Dプリンターを用いた以下の3パーツの作製について述べていきます。実は今回の100g未満FPVドローン作製にあたって、大半の時間を割いたのが3Dプリントパーツの作製です。100g未満と強度の確保を目指してカットアンドトライを繰り返し、ようやくたどりついたのが以下の写真形状のものです。

  • バッテリーホルダー1個
  • フライトコントローラカバー1個
  • プロペラガード4個
3Dプリントパーツ形状

3Dプリンターによるパーツの設計・製造は以下の手順となります。

  1. 3D-CADによるパーツ形状の設計
  2. 設計したパーツ形状をSTLファイルに出力
  3. 変換ソフトを用いてSTLファイルをGコードファイルに変換する。
  4. Gコードファイルを3Dプリンターに転送して3Dプリントを実行させパーツを生成する。

 無償の3D-CADとしては、FreeCAD、Autodesk Fusion機能限定版などがあります。3D-CADで作製した形状をSTL(三角形の連結で構成された表面ジオメトリ)ファイルに保存します。私の使用している3Dプリンターは直接STLファイルを読み込めないので、3Dプリンター付属のPCソフトでSTLファイルをGコード(3Dプリンターや工作機械の動作命令を記述したコード)に変換しています。3DプリンターがGコードを読み込み、2次元形状を堆積させて3次元のパーツを生成します。

 3Dプリンターで生成したパーツは、フィラメントの材料にもよりますが堆積方向の層間の結合が弱くはがれやすい欠点をもってします。特に細い柱状形状(バッテリホルダーの支柱部分等)のものを高さ方向に堆積させて成形しますと、柱の付け根か中ほどで折れやすくなります。この欠点を回避するため、柱状形状のものは堆積方向に形成するのではなく、土台から分離して平面方向に形成し、その後土台と接着剤で接続するようにしています。私は3Dプリンターのフィラメントとして主にABS樹脂を用いています。この樹脂は下記の接着剤で容易に接着可能です。比較的短時間で接着部が固まるので便利ですが、液体ですので小さい箇所の接着には液量の加減が難しいのが難点です。

3Dプリントパーツ接着剤

バッテリーホルダーの作製

 バッテリーホルダーには、バッテリーの固定だけでなくフレームおよびフライトコントローラの保持、テレメトリーの保持、FPVカメラの保持、オプティカルフローの保持、バッテリー接続コネクター(XT30)の保持、スパーク抑制の電解コンデンサの保持等の機能を持たせることにします。

バッテリーホルダー形状

上記の3Dプリンターの欠点を考慮して個別パーツに分解し、以下のように2次元平面形状に成形しました。

バッテリーホルダーの部品構成

この2次元辺面形状の個別パーツを接着剤で組み上げると上記のバッテリーホルダー形状になります。組み立て手順は以下の通りです。ちなみに重量はカメラアタッチメントを除き4.5gとなりました。

  1. ②と②-1を接着する。
  2. ③と③-1を接着する。
  3. 1.および2.で接着したものを向きは上記の図と同じにして①に接着する。
  4. ④を①の②側面に接着する。
  5. ⑤を①のFC保持ネジ部お裏面に接着する。
  6. ⑥を①の裏面のくぼみに合わせて接着する。
  7. ⑦と⑧を裏面同士で張り合わせる。
  8. 張り合わせたものをカメラに装着する。

フライトコントローラカバーの製作

 フライトコントローラのカバーには、フライトコントローラ基板の保護の他にGPSモジュール固定、VTX固定の機能を持たせています。いわゆるTinyWoopドローン等のキャノピーと言われる部品にGPSモジュールを搭載できるようにしたものです。

 FCカバーは高さ方向の強度はあまり必要ないため、2次元形状を積み上げて成形しました。GPSモジュールはFCカバーの上面の窪みに搭載します。VTXモジュールはFCカバー内に搭載(両面テープで接着)し、アンテナ保持パーツからアンテナをFCカバーの外に取り出します。成形したFCカバーの重量は4.5gとなりました。

 私の所有する3Dプリンターはサポート機能を用いて空洞のあるパーツの3Dプリントが可能です。3DプリンターがFCカバー内の空洞に対しフィラメントを充填してサポート部を形成し、微小の隙間を空けてFCカバーの成形を行います。成形完了後に手でサポートを取り除きます。

プロペラガードの製作

 プロペラガードはフレームのモータ取付け穴を利用して、フレームをプロペラガードとモータで挟む形で取り付けます。したがって、1個のプロペラに付き1つのプロペラガードを取り付けます。プロペラガードは強度と重量の攻めあいとなります。当初、ドローンが室内で落下しても壊れないという方針で設計を進めましたが、3Dプリントでこれを実現するのが不可能でした。カーボンガイバーで作製すれば可能かもしれませんが、100g未満FPVドレーンの実現不可能です。そこで方針を変え、ドローンが飛行中に物体に衝突しプロペラガードが変形しても極力プロペラに接触しないということにして設計をすすめました。

 さらに、人と接触する可能性の低い屋外用と人と接触する確率が高い屋内用とで別々のプロペラガードを作製することにしました。屋内では100gを超えたドローンを飛ばしても航空法には触れませんので、重量を増やして強度を高めても問題ありません。もちろんプロペラガードを付属品とすれば屋内用を屋外で使用しても問題ありませんが、プロペラガードが本体に含まれると認識され100g以上と認識されるリスクがあります。以下に、形状(強度)と重量でカットアンドトライをくり返して最終的に成形した屋外用と屋内用の2種類のプロペラガードを示します。

プロペラガード

 屋外用は2本の支柱でガード部を支えます。屋内用は4本の支柱でガード部を支えます。屋内用は1つのガードの両サイドが隣り合うガードと接合できる形状としており、4個のガードを接続して1つのガードとなります。屋内用は4本の支柱と隣あうガードの連結により屋外用よりも格段に強度が向上しています。

3Dプリンターで成形した個別パーツ構成は以下の通りです。上記の3Dプリンターの欠点を回避するため、円弧形状を有する支柱部を2次元平面で構成したものを支柱の厚さ分のみ積み上げています。

プロペラガード部品構成

ガード部には支柱部の位置合わせを用意にするため溝(屋外用は2ヵ所、屋内用は4ヵ所)を設けています。尚、屋内用の固定部に円形の窪みが見られますが、同様の窪みは屋内用にも裏面あります。これは固定ネジの長さ調節用とすこしでも重量を削減するために設けたものです。組み立て後の重さは、屋外用が1.5g×4個で計6g、屋内用は4個連結した状態で11.2gです。屋内用は屋外用の2倍弱の重さになっています。

追記:屋外用のプロペラガード設計変更(2025年10月5)

 本100g未満ドローンには製作してしばらくは屋内用プロペラガードを装着し、室内およびクラブの飛行場(私有地)で飛ばしていました。このブログを始めたことで確認のため上記の屋外用のプロペラガードを装着してみました。パラメータ再調整のため飛行させたところ、屋内用のプロペラガードは支柱部強度が思ったよりも低いことが判明しまいした。原因は支柱部と固定部においてお互い段差を設けて接合する方法をとっていたことです。段差の方向がドローンの上下方向となり上昇や降下等で接合部に上下方向の応力が掛かり、最悪接合部で支柱折れが発生する危険性を持った構造でした。このため支柱部と固定部の接合方法を段差による接合から嵌め込みによる接合に設計変更しました。

 以下に変更点を示します。嵌め込み方法への変更により上下方向の応力が掛かっても支柱が折れる心配はありません。また強度を上げるため支柱間の角度を変更(90°→ 80°)しました。重量に変更はありません。

3Dプリントパーツの重量のまとめ

 バッテリーホルダー、FCカバーおよびプロペラガードのそれぞれの重量は以下の通りです。プリントガードを屋外用とした場合の3Dプリントパーツ重量合計は15.2gとなりました。前回の3Dプリントパーツへの重量配分値15gよりも+0.2gで若干のオーバとなりました。とりあえずこれらの3Dプリントパーツを使ってドローン全体を組み上げることとしました。

番号パーツ名重さ(g)
バッテリーホルダー4.5
FCカバー4.7
屋外用プロペラガード 4個6.0
屋内用プロペラガード 4個11.2
①、②、③の合計15.2
①、②、④の合計20.5

 以上、今回はバッテリーガード、FCカバー、プロペラガードの3Dプリントパーツの製作を記載しました。次回は選定したフレーム、電子パーツおよび3Dプリントパーツを用いたドローンの組み立てを説明していきます。

100g-drone

Posted by dronedroid-masa