100g未満FPVドローンの設計 – パーツ選定(2)

2025年9月24日

 前回に続き、100g未満FPVドローンの部品選定を行います。選定する部品は以下の通りです。

No.パーツ名概要
4コンパス搭載GPSモジュール小型、軽量モジュール
5FPVカメラ小型、軽量
65.8GHzビデオトランスミッター小型、軽量、ローパワー、総務省への無線局免許申請のための系統図が入手できるもの
7テレメトリモジュール地上局との交信に必要。小型、ローパワー、長距離(1Km程度)交信可能
8小型オプティカルフローセンサモジュールLidar搭載、小型、軽量、ローパワー
9小型ブラシレスモータ 4個小型、軽量、5000kv~8000kv
103インチプロペラ 4枚軽量、高強度
11バッテリー2セル(7.4V)バッテリー

コンパス搭載GPSモジュールの選定

 Ardupilotによる自動ホバリングや自動飛行、リターンホーム(ArdupilotではRTL:Return to Launch)等の飛行モード(Loiter Mode、 PosHold Mode、 RTL Mode等)を実現するにはGPSモジュールが必須です。ドローン用のGPSチップは中国の複数社が製造していますが、実績としてはu-blox社が抜きん出ています。

今回は、u-blox社M10チップを搭載したGPSモジュールを使用することとし、合わせてコンパスチップもモジュール内に搭載したものを価格、重量の観点から選びました。選定したモジュールはGOKU GM10 mini V3です。このモジュールは小型(アンテナ部分が18mm×18mm□)ですが、安定したホバリング等が可能です。GPSデータ通信にUART(TX,RX)、コンパスデータの通信にI2Cを用います。

FPVカメラおよび5.8GHzビデオトランスミッター

 FPVカメラには価格、性能、重量より、Runcam NANO 3を選定しました。ビデオトランスミッターとしては、2.4GHz帯のWifiを用いるものと5.8GHz帯のFM変調方式を用いるものがあります。2.4GHz帯のWifiによる映像送信ではドローンから数十メートル範囲でしか受信できず、尚且つLinux等のOSが必要となります。100g未満のドローンにLinux等のOS搭載は厳しいので、5.8GHz帯のFM変調方式トランスミッターで映像を送信することとし、価格、性能、重量よりTBS Unify Pro32 nano を選択しました。尚、DJIのドローンでは2.4GHz帯を用いて数十Km範囲で低遅延映像送信ができるようですが、どのような方式なのかよくわかりません。

 5.8GHzビデオトランスミッターから映像を送信する場合、5.7GHz帯のアマチュア無線バンドを使用することになりますので、アマチュア無線4級以上の資格取得が必要になります。また、実際にFPVドローンを飛ばしてビデオ送信するには、総務省に無線局免許申請が必要となります。この際、5.8GHzビデオトランスミッターの系統図が必要です。国内のドローン部品販売店であれば5.8GHzビデオトランスミッターの購入時に系統図も同梱して貰えます。ドローン無線局免許申請の手続きについては日本アマチュア無線振興協会のサイトが参考になります。私もFPVドローンを飛ばすためにアマチュア無線4級を取得して無線局許可申請を行い、無線局免許状をもらいました。余談ですが、アマチュア無線4級取得のついでに第2級陸上特殊無線の資格も取得しました。

FPVカメラおよびビデオトランスミッター

テレメトリーモジュールの選定

 テレメトリモジュールは、低ビットレートの無線を使ってフライトコントローラからのドローンの位置情報や各種センサーの情報、バッテリーの電圧、消費電流等モニター情報を地上局に送信し、また地上局から制御信号を受信してフライトコントローラに転送します。

 ArdupilotのテレメトリードキュメントサイトにはShort Range(<10km)で用いる430MHz帯、900MHz帯、2.4GHz帯の種々の無線モジュールの使用例が記載されています。しかしながら、430MHz、900MHz帯のものは日本の技適を取得しておらず使用することができません。2.4GHz帯ではBlutoothやDigi international社のXbee Zigbeeモジュールなどがあり,これらは技適を取得しているので国内で安心して使用することができます。また、最近ではESP32Cを用いたDroneBridgeがテレメトリーとして使用可能になっています。

 本ドローンでは、重量、消費電力の観点からXbee Zigbee3 PCB アンテナ(XB3-24Z8PT-JB3-24Z8PT-J)モジュールを使用することとしました。このモジュールは見通しがよければ1.2km離れた地上局とドローン間で交信が可能となっています。100g未満FPVドローンで1.2km離れて飛ばすことまずはない(この程度の距離になるとほとんど目視外飛行になるので、レベル2のドローン操縦者資格が必要となる)と思いますので十分な通信距離だと思います。

小型オプティカルフローセンサモジュールの選定

 室内ではGPS衛星からの電波が届きにくく、GPS信号がロックし辛くGPSを用いたホバリング(Loiter mode)等の動作が難しくなり安定に飛行することが困難となります。これに対しオプティカルフローセンサは、室内の床の明暗情報より位置の変化を検出するので、室内でもホバリングが可能となり安定して飛行することが可能です。ただし、床の明暗情報が検出できない環境(十分な照明が無い部屋等)では制御不能になるので注意が必要です。

 Adupilotは各種オプティカルフローセンサに対応しておりUARTやCANで接続すれば使用可能状態となります。但し、GPSとオプティカルフローは同時に使用することができずどちらか一方に切り替えて使用することとなります。

 今回は重量、価格の観点よりMateksys 3901-L0Xを採用しました。このモジュールはオプティカルセンサーとしてPixart Imaging Inc.のPMW3901、測長用のLidarとしてSTmicro社の VL53L0Xを搭載しています。オプティカルセンサーの最低照度は60Lux以上となっています。また、このモジュールはMultiWii serial protocol(MSPプロトコル:任天堂Wiiの通信プロトコル)を用いており、1つのUARTでオプティカルフローのデータとLidarのデータをフライトコントローラに送信することができます。

小型ブラシレスモータの選定

 本ドローンに用いるブラシレスモータはフレームとセットということでインターフェース2022年4月号掲載のものと同じHappy Modele EX1202.5-KV6400の2セルバッテリー用を採用しました。品名のEX以降の数値はロータのサイズを示しており、1202.5はロータ直径が12mmで、ロータ高さが2.5mmであることを示しています。KV6400は、無負荷時のrpm/Vが6400であることを意味します。Happy Modele EX1202.5にはKV11000のものがありますが、こちらは1セルバッテリー用ですので、購入時には注意が必要です。

3インチプロペラの選定

  プロペラには、インターフェース2022年4月号掲載のものとほぼ同じGemfan Hurricane 3018 Durable 2-Bladeとしました。このプロペラは2枚ブレードです。3枚ブレードのものも試しましたが、2枚ブレードのものと性能にそれほど差がみられないので、軽量化のため2枚ブレードに戻しました。

バッテリーの選定

 インターフェース2022年4月号では、モータにEX1202.5 KV6400を用いた場合、DC2.3Aの消費電流で約100gの推力が得られています。300mAhのバッテリーを用いれば飛行時間は7.8分と算定されています(インターフェース2022年4月号100ページ参照)。しかしながら、実際には水平移動のためのモータ消費電流、フライトコントローラ、各種センサーの消費電流等が加わり、全体で最大5A程度の消費電流が見込まれます。インターフェース2022年4月号100ページを参考にして飛行時間を推定すると、電流容量が300mAh、450mAh、550mAの場合のそれぞれの飛行時間は以下のように算定されます。

No.電流容量推定飛行時間
1300mAh(0.3/5)*60=3.6分
2450mAh(0.45/5)*60=5.4分
3550mAh(0.55/5)*60=6.6分

 電流容量300mAのバッテリーでは重量は他のバッテリーよりも軽いので、多少飛行時間は伸びますがそれでも本ドローンの概略仕様である飛行時間5分以上は厳しいと言えます。電流容量450mAhバッテリーで飛行時間が5分程度となります。550mAでは7分弱となります。

 できるだけ長時間飛行させるため本命のバッテリーとしては550mAhのバッテリーとし、重量オーバの場合は450mAhバッテリーを使用することとしました。550mAhのバッテリーとしては重量、放電レートを考慮してGNB 7.4V 2s HV 550mAH 100Cとし、450mAhのバッテリーにはGNB 7.4V 2s HV 450mAH 80Cを選定する事としました。尚、2セル(7.4V)バッテリーのメーカは色々ありますが、放電レートの違いを加味しても私が調べた限りではGNB(GAONENG BATTRY)のものが比較的軽く作られています。尚、放電レートの低いバッテリー(例えば電動ガン用、放電レート20C程度)であれば軽くなり、飛行時間は延びそうですが、放電レートが低いため内部抵抗による電圧降下が大きくなり、Ardupilotのフェールセーフ機能により短い時間で飛行ができなくなります。

 長くなりましたが、部品設定は以上です。次回は、部品の選定結果ならびにそれぞれの部品の重量およびその合計についてまとめたものを記載します。

100g-drone

Posted by dronedroid-masa